Aさんの場合(40代・単身)

シェルター退出後も、あじーるとのつながりは、貴重なつながりです。新しいひとと出会い、どうでもよい話をする。それだけでも、発見があります。

シェルターを利用した経緯を教えてください。

シェルター昼食国立大学の大学院を中退しました。研究者になる道を辞めたときに、厳格な母親から縁を切られ、家に帰れなくなりました。保証人なってくれる人がおらず、新しい家を借りるのにもかなり苦労しました。教育関係の個人事業で生計を立てていましたが、トラブルを発端に事業不振になり、収入が激減し、ホテルやネットカフェから仕事へ通う生活を一年間続けました。手持ち金が90円になり、嵐の夜に一晩路上で寝たのは本当に堪えました。携帯電話の充電が切れる間際であじーるに相談をしました。最後の三日間はほとんど食事を摂っていなかったので、空腹でくらくらでした。事務所でいただいた酢豚が身に沁みました(笑)。

シェルターの良かったところを教えてください。

個室だったのが良かったです。一人の時間をもって、じっくり今後について考えることができました。シェルター退出後も、あじーるとのつながりは、貴重なつながりです。新しいひとと出会い、どうでもいい話をする。それだけでも、発見があります。

いま困りごとを抱えているひとに、メッセージをお願いします。

何度失敗してもいいので、前に進んで欲しいです。但し、そのときは第三者に客観的な意見をもらったほがよいでしょう。一人で動くと、自分ひとりだけの価値観になってしまいますから。シェルターは単なる一時的な避難場所なのではなく、再出発しようとする苦闘するひとたちにとってはいつも元気をもらえる場所であり、自分の立ち位置を再確認できる場所でもある、シェルターでたらハイおしまい、ではなくいつでも顔見せてほしいし、つながりを感じることができる場所、それが あじーる だと私は感じています。

Aさんはこれからどんな将来を?

今後は、これまでのキャリアを活かして、子どもの支援をしたいです。それも、単なる学習の支援にとどまらず、困窮など、子どもの生活背景にアプローチしていきたいです。


Kさんの場合(30代・単身)

「人とのつながりを持てるサロンと、プライバシーが守られている個室のバランスのおかげで、自分のペースを取り戻せました。」

幼少の頃より、両親から言葉の暴力や、殴る蹴るがありました。父親に外で殴られ引きずりまわされたときに駆け込んだ警察に「この地域にシェルターはない」「ホテルに泊まって仕事に通い引っ越すしかない」といわれ絶望しました。自分なりにインターネットで情報を探し、役所にメールを送ったところ、返信が返ってきました。地元にDVシェルターの団体があることが分かりました。その団体から、あじーるを紹介されました。初めてシェルターの部屋に入り、ドアのかぎをかけたとき、「ああ、これで終わる」と、心底ほっとしたのを覚えています。

シェルターにいる間、つらかったことはなんですか?

シェルターに入ったときって、目の前のことに精一杯で、何をしたいかを考えられる段階ではないんです。でも、先に進むためには、「何がしたい」を周囲に見せなくてはいけない。それがつらかったです。両親から逃れ、環境が変われば、うつや摂食障害の症状も自然と消えるだろうと思っていました。貯金を使ってアパートを借りて、仕事を探して…と、考えていました。ところが、これまでの人生で受けたダメージから引き起こされた病気は、自分が考えていた以上に根深かったようでした。シェルターに入った後も、病気の症状は続き、自分がすぐに働ける状態ではないことに気づきました。札幌に出る前に地元の支援団体のひとつに「これからの人生長く続くのだから、シェルターにいる間に、何か資格を持ちなさい」といわれたので、病気と時間をかけて向き合いながら、生計を立てられる資格を持とうと決意しました。

シェルターの良かったところを教えてください。


まず自分のような状況のひとを受け入れる先があるというだけで、良かったです。またいろいろな機関の窓口としての機能があったところと、それから「あじーるサロン」の存在も、大きかったです。あじーるサロンでは、昼食をスタッフや他のひとと一緒に食事を摂ることで、そのまま相談をしやすかったです。日常的な会話のなかから、「それなら、こういうのがあるよ」という解決策が出てきました。三食、ただ食事を摂るだけのシステムなら、こうはならなかったと思います。ひととの繋がりを持てるサロンと、プライバシーが守られている個室のバランスのおかげで、自分のペースを取り戻せました。

いまの将来の展望は?

とにかく生活の安定です。貯金はまだありますが、減っていくのを見るのはカウントダウンのような気持ちです。気づくとお金の計算ばかりしています。今後は、ハローワークの求職者訓練で、資格を取得し、仕事を見つけたいと思っています。